以前、レベニューシェアリングなどに関する訴訟「House v. NCAA事件」の記事を掲載しましたが、6月6日に裁判官が当該事件における和解を承認しました。
これを受けて、ミシガン大学のDirector of Athletics(体育局長)から、ミシガン大学のファンや卒業生、支援者に対して、以下のメールが送られました。
House訴訟の影響や今後のカレッジスポーツの行く末について参考になると思います。
メールの内容
以下、メールより引用:
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ミシガン大学のファン、卒業生、支援者へ
6月6日、クラウディア・ウィルケン判事がカレッジスポーツの環境を劇的に変えるHouse v. NCAA事件を最終承認しました。この和解結果は、我々の財政とカレッジスポーツの仕組みに大きな影響を与えるものです。
鍵となる3つの変化は次のとおりです:
第一に、2050万ドルまでの資金を大学が学生アスリートと共有できる「レベニュー・シェアリング・モデル」が導入されること、第二に、すべてのスポーツにおいて新しい登録選手数の制限が段階的に導入されること、第三に、そのスポーツで新たに設定された登録選手数の制限まで奨学金が無制限となることです。
このような追加費用が見込まれるため、ミシガン大学体育局は2025-26年度に2700万ドル近い赤字(レベニューシェアリングに完全に参加するための2050万ドルと、新たな奨学金620万ドル)に直面することになりました。今秋はフットボールのホームゲームが6試合しかないため、前年比で約1910万ドルの減収が予想され、このコストはさらに膨らむことになります。体育局は、これらの新たな出費に対応するため、いくつかの対策を講じました。大学財政の調整、予算削減、遠征規定、空席になった特定の職位の不補充、新たな収入源の活用などを通じて、来年度の必要経費の見積りを2700万ドルから1500万ドルに削減しました。
財務状況がどのように改善されたのか、そしてなぜ皆様の継続的なご支援が必要なのかを説明したいと思います。
この方程式における固定要素は、House訴訟の和解案で定義された「レベニューシェアリングマネー」です。来年度の学生アスリートへの分配金は、1校あたり最大約2050万ドルで、各校はそのお金をどのように分配してもよいとされています。この金額は、メディア権、チケット販売、スポンサーシップ、ライセンスからの収入を組み込んだ計算式を使って算出され、Power 4に属する大学の平均で算出されます。この計算式の基になる金額は毎年追跡調査されるため、総額2050万ドルは将来的に上昇することになります。この金額は、授業料、寮費、食費、その他すでに提供されている多くの便益と合わせると、NCAA学生アスリートは、プロスポーツ選手と同じような割合の収入を受け取れる立場にあります。私たちは、Big Tenカンファレンスと全米チャンピオンシップの競争力を維持するために、毎年認められている全額を使って学生アスリートを支援します。
もうひとつ考慮すべき固定要因は、増加傾向にある奨学金です。House訴訟での和解の結果、体育局はすべてのチームのすべての登録選手枠に全額奨学金を提供できるようになり、チームの競争力と奨学金支援のレベルが直結することになります。2025年秋には、19のスポーツで82.1個の奨学金が新たに追加され、その費用としてさらに620万ドルかかるため、ミシガン大学体育局は、年間総額4000万ドル近くのスポーツ奨学金を支援することになります。
この追加コストを乗り越えるために、当体育局のスタッフは、長期的な目標であるスタッフ総数の10%削減を目指した人員削減と、新規採用の承認プロセスの厳格化という2つの方法を通じて、徐々に数を減らしていく予定です。同局は来年度における1000万ドル以上の予算削減を約束し、メインキャンパスと協力してテレビ収入から大学への配分を800万ドルから200万ドルに減額しました。また、遠征規定を見直すことで、2024-25年度中に90万ドル以上の費用削減を実現しました。
さらに、体育局は、Upper Deck GolfやAEG/ザック・ブライアンとのパートナーシップなど、施設内でのイベントからもより多くの収益を上げています。サッカーの国際試合や2014年のNHL Winter Classicなどのイベントは、過去にそれぞれ75万ドルから300万ドルの収益を体育局にもたらしました。2024年にはCrisler Center、Yost Ice Arena、Michigan Stadiumでアルコール販売が実施され、225万ドル以上の収益がありました。私たちは、体育局全体でさらなる収入を得るための他の機会を模索し続けます。
これらの変化は、当体育局にとって非常に大きな事業でしたが、まだ始まったばかりであることも承知しています。引き続きご支援とご理解を賜りますようお願い申し上げるとともに、ご質問やご意見をお待ちしております。
Go Blue!
ウォード・マニュエル
体育局長(Donald R. Shepherd Director of Athletics)
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このメールを読んで思ったこと
印象に残ったのがこの文言:
「私たちは、Big Tenカンファレンスと全米チャンピオンシップの競争力を維持するために、毎年認められている全額を使って学生アスリートを支援します」。
非常に心強い言葉です。一方で、これは全米屈指の規模と人気を誇るミシガン大学だからこそ宣言できることなのだろうとも思います。
NIL制度とも相まって、アメリカ大学スポーツ界は”The rich get richer”がますます進んでいくことになるのでしょう。アメリカらしい傾向ではありますが。。。

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