早いもので、カレッジフットボールの2024年シーズンは第4週を終えました。今週も、ミシガンスタジアムにて、前半戦では二度目の大一番、USCとの試合を観戦してきましたのでその様子をお伝えしたいと思います。
Stripe Out
この試合は、事前にミシガン大学側から観客に対して、Stripe Outという企画の実施がメールで通知されていました。
Stripe Outとは、下の図のように奇数セクションの観客はMaize(黄色)、偶数セクションの観客はBlueのシャツを着用して、スタジアム全体をMaize&Blueの縞模様に染めようという企画です。
そして試合当日、観客は各々のアサイメントを忠実に遂行して、見事にスタジアムはMaize&Blueに染まりました。これだけでもスタジアムに行った価値があるなと思えるような光景でした。
USCはBIG TENに移籍後初のカンファレンスゲーム
西海岸の名門校であるUSCは、2024年シーズンから、西海岸所在の学校により構成されていたPAC-12を抜け、中西部の学校を中心に構成されるBIG TENに移籍しました。
この日の試合は、そんなUSCのBIG TEN加盟チームとしての初めての試合となりました。この試合を中継したCBSでは、USCの移籍後初のカンファレンスゲームであることが強調されていましたので、BIG TEN側も話題になるように、BIG TENの古参であるミシガン大学と西海岸の雄であるUSCの一戦を、しかも象徴的なミシガンスタジアムで開催したのだろうと勝手に推測しています。
USCは第1週でLSUに27‐20で勝利し、第2週のUtah State戦は48‐0の完封勝利を挙げ、開幕前の低評価を覆しAP Pollランキング11位でこの試合に臨むことに。
一方のミシガン大学は、第2週のテキサス大学戦に続き、9月中にもかかわらずホームで2試合目の強豪校との対戦。第4週を迎える時点でのミシガン大学のAP Pollランキングは18位、世間的にはUSC優勢の声が大きかったように思います。
前半はミシガン大学優勢の展開
11万人の観衆が詰めかけた一戦は、予想に反して前半はミシガン大学が攻守ともに押す展開に。第1Qはミシガン大学のRB Mullings(#20)が53ヤードを走り切って先制TDを奪うと、第2QにはDonovan Edwards(RB#7)が今度は41ヤードを走りTD!この時点で14‐0と14点差をつけます。
その後、Miller Moss(QB#7)からZachariah Branch(WR#1)への42ヤードのパスなどで前進したUSCがフィールドゴールで3点を返し、前半はミシガン大学14-3USCで終了。
前半は、ミシガン大学のディフェンスがUSCのランをことごとく止め、ランでは全くゲインを許しませんでした。一方のミシガン大学は、この試合から先発QBの座に座ったAlex Orij (QB#10)を中心に、パスを完全に捨てるという戦い方を採用。これがUSCに通用し、2本のロングランによるTDを奪うことに成功しました。
後半は一転してUSCペース。USCの逆転勝利かと思われたが…
後半はUSCのリターンで試合再開。かつて「第3Qを制する者が試合を制する」とどこかで聞いた覚えがありますが、この試合で第3Qを制したのは間違いなくUSCの方でした。
ミシガン大学のエースCBであるWill Johnson(#2)によるPick 6(インターセプトリターンTD)を奪われてしまったものの、USCは第3Qで2つのTDを挙げ、20‐17という3点差まで追い上げました。
その後、ミシガン大学は、時間消費も意図して、RB Edwardsにフィールド中央へのランプレーを託したところ、痛恨の自陣でのファンブルを犯す結果に。ミシガン大学にとっては考え得る中でも最悪とも言える形でUSCにボールを渡してしまうと、3rd&16に追い込んだ状況下で、MossからJa’Kobi Laneへのきれいなパスを通され、スコアは20-27と追う展開に。
ランしか期待できる攻撃策がないミシガン大学にとって、第4Q残り約7分で4点を追い上げる展開は非常に厳しいと思われました。観客もそんな空気を感じ取っており、前半に比べると元気を失ってしまったように感じられました…
しかし、ミシガン大学を応援するファンは全く席を発ちません。その期待に応えてか、Mullingsが渾身の63ヤードのランで一気にUSCゴール前へ。
27‐24でミシガン大学が激戦を制する
最後は、第4Q残り37秒で敵陣1ヤード地点からの4th&Goalのプレーで、本日大活躍のMullingsがFBのブロックを活かして逆転のTD!
最後のUSCの攻撃を止めて、ミシガン大学が27‐24で勝利!厳しい試合を勝ち切ったことは当然大きいですが、とにかくランで攻めるんだというチームの方針が固まったのもよかったのではないでしょうか。
Mullingsは、結局、17回のキャリーで159ヤード・2TDを獲得。相手ディフェンダーに一度ヒットされてからの力強さが非常に頼もしく、オフェンスに勢いを作っていました。
単なる一勝ではない大きな勝利
この勝利は数字上の単なる一勝以上の価値があると思っています。
前半を優勢(14-3)で折り返したにもかかわらず、第3Qではオフェンスは完封され、ディフェンス面でも徐々にUSCのランプレーを止められなくなり20-17に。そして第4QにはキャプテンのEdwardsが自陣でファンブル。絶対にしてはいけないミスが出てしまいターンオーバー。ディフェンスはここでも必死のプレーで3rd Downまで追い込んだものの、一気にエンドゾーンへのパスを通され逆転を許す。
ミシガンスタジアムの空気は一瞬「今年はやっぱりだめか…」となったように感じました。相手は名将Lincoln Riley率いるUSC、ハーフタイムを経て形勢が一転したことを受け、「コーチ陣のアジャスト勝負でも負けか…」という雰囲気が漂いました。しかも、ミシガンはランヘビーの攻撃しかできず、時間が限られた中で追い上げるには厳しい状況。。。
こんな状況にも関わらず、彼が一気に空気を変えてくれました!こんな危機的状況で新たなスターが出てくるチーム、まだまだ捨てたものではありません。
試合後、ミシガン大学のSherron Mooreヘッドコーチが観客への感謝の言葉を述べていましたが、試合を通じてミシガンファンによるクラウドノイズは物凄いものでした。2週前のテキサス戦も第1Qはミシガンファンの歓声は巨大でしたが、テキサスに立て続けに点を取られ徐々にクラウドノイズは小さくなり、後半はお通夜状態に。しかしこの試合ではファンの熱量は最後まで衰えることなく、USCに大きな圧力をかけ続けていたように思います。
個人的には昨年11月のOhio State戦と同じくらい熱く盛り上がっていたのではないかと感じました。
プレーオフ争いの皮算用
今年からカレッジフットボールプレーオフの出場枠が12校に拡大されました。BIG TENからは多くても4校が12位以内に選ばれると予想しますが、Ohio Stateは戦力的にBIG TEN内で1位か2位になることは間違いなく、他の大学は残りの2~3席を争う構図になります。
その席を争う候補は、オレゴン、Penn State、USC、そしてミシガンかと思います。勝敗数が並んだ場合は直接対決の結果が考慮されることを踏まえると、ミシガン>USCという序列をこの段階で得たことは大いにプレーオフ進出に役立ちます(昨年のテキサス>アラバマと同様の構図)。
今後、10月12日にPenn State対USCの試合があり、もしこの試合でホームのUSCが勝てば、今シーズンはPenn Stateとミシガンの直接対決がないため、ミシガン>USC>Penn Stateという順番になり、プレーオフに向けてかなり有利な立場になります。
オレゴンとミシガンは11月2日にミシガンスタジアムで直接対決をするので、ミシガンがこの試合に勝てれば、その後Ohio Stateに敗れたとしてもBIG TEN Championshipやプレーオフには行けるかもしれません。
そんな皮算用をしたくなるようなBig Winでした!
コメント